おのずとマトリョーシカっぽいことになる

宇宙に持ち主がいたら、という話。

月や地球やその他の星=オブジェ。
太陽=オブジェ兼照明。
ブラックホール=ゴミやホコリを除去するポンプの吸い込み口。

広い部屋に置かれた水槽。
この水槽は観賞用の謂わばインテリアで、生物の飼育を目的としていない。
水槽といいながらも水ははられておらず、無数のオブジェと照明が絶妙に配置されている。
オブジェの中には回転式のものまであり、たいそう美しい。

ながいながい時間の経過の中で、オブジェを巣として生命体が誕生していることに、持ち主は気付いていない。
大きな水槽の中で一つ一つのオブジェはあまりに小さく、そこに生まれた生命体など、もはや目視できる大きさではないのだ。
水槽に傷つけるようなイタズラさえしなければ、その存在を知られることはないだろう。

持ち主は他にもたくさんの水槽を所有していて、全ての水槽にそれぞれ名前をつけている。
球体オブジェを多用したのが「宇宙」だ。

夕食後にコーヒーを飲みながらうっとり眺め、就寝前には点検を怠らない。
不要なゴミを爪先ではじきながら目を凝らす。
(ゴミはやがてポンプが吸い込むだろう)
どこかに不都合は生じていないか?
あれば原因を探って、水槽「宇宙」が損なわれる前に手を打たねば。

飽きもせず、毎日毎日くりかえす。

持ち主の名前は「G」かな、多分。