絶対装備

なにがそんなに気に入らないのか。

抱っこする腕の中でのけ反って手足を激しくばたつかせながら、この世の終わりとばかりに泣きわめく我がこ。
どうなだめてもおさまらない、これが黄昏泣きってやつ??
あー、そういえば薄暗くなってきたじゃないの。
洗濯物取り込んで、雨戸閉めなきゃ。
いや、その前に明かりを…、電気つけたい、電気電気…、うお!ちょっと待ってー、危ないから動かないでー!!

……。

そんな風に暴れたら、落っこちて怪我してしまうかもしれないのに。
いつまでもグズっていたら、もう知らないとそっぽを向かれてしまうかもしれないのに。
おとなしくしていたほうが上手に育ててもらえるかもしれないのに。
そうしない、我がこ。

このこは知っているのだな、自分は何があっても守られるべき存在であるということを、そしてその通りになるということを、それが覆らないということを。
わたしはこのこを守るし、このこはわたしに守られる。
築き上げなくとも備わっている、本能レベルの揺るぎない信頼関係だ。

それのなんと愛おしいことだろう。

そう思いながら、グズり暴れ続けるわが子を布団にねかせ、「じゃあオモチャで遊ぶー?」とその姿を除き込めば、小さな足を振り上げてわたしの顔面を目一杯蹴りつけながら、「ぅだっはー」と声をあげて笑っていらっしゃる。
いつのまにやら上機嫌。

…う、うい奴め…!