拝啓 ○○○

むかし、とても好きで数年に渡って追いかけていたブログが閉鎖したことがある。

彼女はそれまでのエントリを全て消去しブログの閉鎖を告げると、
「皆さま、死ぬまで楽しい人生を」
という言葉を残して去っていった。

とても賢く、その賢さ故に社会を要領よく生き抜くことの難しさと違和感を全身に受け止めているような人で、その最後にはいくらかのなげやりな皮肉が含まれていたように思う。

読者として、そのブログで綴られる文章を目にする機会を失ってしまったことがショックだったのはもちろん、更新される度に「それでも彼女は元気でいるのだ」と確認をしていたわたしにとっては、そのチャンスをなくしたことが何よりも悲しかった。

ひょっとしたらどこかでブログを再開しているかもしれない。
何らかの形で思いを発信しているかもしれない。
けれど、これだけ様々な文章が多様なツールによって溢れる現代において、再び彼女に出会うことは難しいだろう。

だからせめて、この世のどこかで彼女が彼女の生きたいように生きる方法を手に入れていますようにとひそやかに祈りながら、私は私に与えられた今ある出会いを大切にしたいと思う。