色褪せた思い出

ガタンゴトン、ガタンゴトン、

19:10
電車に乗ってユラユラ揺られる。
車内の客はバラバラまばら。

「お金って、どうにかしてなくならないかなぁ」
「…お金?」
「この世からお金なくならないかなぁ」
「うん?」
「人間も動物なんだしさぁ、なんていうか、こう、食べたいなら食べればいいと思うんだよね。お金どうとかじゃなくて、そこにあるもの食べたいと思ったら手にとって食べれば良いと思う。そこに行きたいと思ったら行けばいいと思うし。誰の土地とか気にせず。所有地って言ってもさぁ、結局は地球なわけじゃん。だからさぁ、つまり、お金、要らないと思うんだけどなぁ」

ガタンゴトトン、ガタンゴトトン、

「そうねぇ。それは難しいねぇ。そもそも世界を牛耳って動かしてる人たちってもれなくお金持ちだからね。貨幣制度あった方が都合良い人たちだもん。お金なくなんないよ。」
「えー。そうかー。だめか。じゃあさ、」

社会人になってほんの数ヶ月、なれない仕事で疲れ果てショート気味なわたしの現実逃避思考に当たり前のように同レベルで付き合ってくれたM。
あなたと同期入社で、あなたと同チームで、わたしはとってもラッキーだったよ。

ガタタンゴトン、ガタタンゴトン。

19:15
ちょうど車内に眩しく西陽が差し込む季節。
わたしもMも、それは見事な橙色で。